仏教学部 講師 八尾 史
仏教の開祖シャーキャムニ(釈迦牟尼)仏は旅の途中、北インドのクシナガリーという村で80歳の生涯を終えたとされる。その日を記念する行事が涅槃会である。
スリランカと東南アジアの上座部仏教圏では仏の誕生、成道、入滅をすべてヴェーサーカ月の満月の日のできごととしてその日を盛大に祝い、これはグレゴリオ暦(新暦)の5月から6月にあたる。チベット仏教圏でも同様で、その月をチベット語でサガ・ダワとよぶ。一方東アジアでは三つのできごとは別々の日であって伝統的に2月15日を入滅の日とし、現代日本では多く新暦2月15日に涅槃会の法要をいとなむ。
仏の最期を描写する一群の経典は、その夜一対のシャーラの木が時ならぬ花を一面に咲かせたと語る。平家物語冒頭にいう娑羅双樹の花である。淡黄色をした五弁の小さな花で、通常3月ごろに咲くという。
※ 本コラムは『学園通信347号』(2022年1月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。