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実体験重視の「データサイエンス・AI教育」

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総合教育研究部自然科学部門 仲田資季教授 × 教務部教育支援係 近藤 慧さん

写真左:近藤 慧さん 写真右:仲田資季教授

統計学や情報学、数学を礎とし、現代社会を切り拓く学問ともいえるデータサイエンス・AI。「理工学部の領域でしょ?」「文系には関係ないでしょ?」と思っていませんか。データサイエンスやAIは、金融、製造、サービス業、医療、介護、教育、公共機関、科学技術そして私たちに身近なゲームやSNSなど、現代社会のあらゆる場面で人々の意識や行動に影響を与えています。
駒澤大学では学部学科に関係なく、全学共通の教養教育科目でデータサイエンス・AIについて幅広く学ぶことができます。授業を担当している理論物理学・数理科学のスペシャリスト・仲田資季教授と、プログラム立ち上げ時から関わってきた教務部教育支援係の近藤 慧さんに、「駒澤大学らしい」データサイエンス・AI教育についてお話を聞きました。

データサイエンス的な思考法を身につける

近藤さん:
駒澤大学の「データサイエンス・AI教育プログラム」は、各務洋子前学長(グローバル・メディア・スタディーズ学部教授)が推進し、総合教育研究部自然科学部門の坂野井和代教授が学長補佐となって、2022年度から始まりました。文部科学省のMDASH(令和5年度「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)」)を得て、国からも評価されているプログラムです。

仲田教授:
私は2024年度から総合教育研究部自然科学部門に所属し、「データサイエンス・AI⼊⾨」や「プログラミング入門」などの教養科目の授業を担当しています。駒澤大学に着任する前は物理学の専門研究を扱う大学院教育がメインだったので、さまざまな学部学科の学部生を対象とした全学向けの教養科目としてデータサイエンス・AIを教えるのは自分にとってもチャレンジでした。

近藤さん:
学生の反応はどのような感じですか?

仲田教授:
最初は「難しい」という声が多いです。しかし、大学とは新しいことを学ぶ場なので、難しいと感じるのは当然かもしれません。また、文系科目とは異なる考え方やスキルに出会うので、戸惑いがある一方でその価値も大きいと思います。授業を完走した後には「新たな考え方が身についた」「大変だけど役に立つ」といった感想が多くなります。データサイエンス・AIは自然科学の方法と共通する部分が多いため、その基礎を学ぶことで、数学的であったり、科学的な考え方が身につき、「データサイエンスや自然科学は実社会の生活に役に立つんだ」と実感してもらえているなら嬉しいです。

近藤さん:
データサイエンス・AIは、理系のイメージを持たれがちですが、駒澤大学のプログラムは必ずしも数学の知識を増やしたり計算式が解けるようになったりすることを目的としたものではないですよね。文系の学生でも関心を持てるようどんな工夫をされているのですか。

仲田教授:
理系学生にとってはそれも大切な目的の1つなのですが、文系学科が大半の駒澤大学では、観測してデータを分析し、そこから法則性や新奇な特徴などを見出すといった自然科学的なものの見方をまずは広げられたらと考えています。少し前に近藤さんと一緒に出張した際に、そんなことを熱く語り合いましたね。

Amazon Web Service Japanなどの実践研修でDXを体験

近藤さん:
駒澤大学では、2025年度からはトランスコスモス財団からの助成を受けて、研修やトレーニング、資格取得サポートなどを学生に無料で提供することができる「DXフロンティア育成プログラム」という課外講座が開講しました。オフィスやコールセンターの業務でどのようにDXを実現してるのかを見学・体験できる実践研修も行っています。Amazon Japanでの研修やAWS Skill Builder のトレーニング受講もその1つです。

近藤さん:
駒澤大学の「データサイエンス・AI教育プログラム」では、まず「リテラシーレベル」でデータサイエンス的な考え方や基礎知識を学びます。さらに深く学びたい学生は、その先の「応用基礎プログラム」に進み、同時に「DXフロンティア育成プログラム」にも参加することができます。一人ひとりの関心やレベルに応じたプログラムを用意しているところが、駒澤大学の特色だと思います。

 

仲田教授:
ここでDXについて説明しておきましょうか。DXとはDigital Transformationの略語で、単なるIT化ではなく、デジタルツールやデジタルデータをネットワークとして深く組み込むことによって、煩雑な業務を効率化したり人の動きを変えたりする、パラダイムシフトを目指す取り組みです。例えば、ひと昔前の会社では紙の書類を手で運んで回覧される「ハンコリレー」と呼ばれるものがありました。そういった申請や決裁をクラウド上で完結できるシステムを構築することで、現場・会社・出張先などどこからでも処理を進めることができ、各自が注力すべき仕事により集中できるようになります。例えば、駒澤大学でも図書館のホームページでリアルタイムの混雑状況を確認できるようになっており、人の流れを可視化して混雑の緩和につなげています。

データサイエンスに裏技などない!

近藤さん:
2022年度当時からプログラミング関連科目には定員数の7~9倍の履修希望があり、現在も年間6コマで合計1,300人と多くの学生が履修しています。ChatGPTなどの生成AIの登場もあいまって、最近は進路説明会などで高校生と話していてもデータサイエンス・AIに関心がある人はますます増えている印象です。

仲田教授:
しかし、いざ初回の講義で学生たちに聞いてみると、「自分はこういうことがやりたくて、それにはプログラミングやデータサイエンスが必要だから学びたい」といった積極的な動機を持つ学生はまだそこまで多くない印象です。大半は「AIやプログラミングができないと世の中に乗り遅れそうだから」「できたらカッコいい」といった不安感や期待感から履修しているようです。高校で「情報」が必修化されたとはいえ、現実的には試験科目として高得点を取るための勉強に偏りがちです。だから、データサイエンスや自然科学的な視点や原理を理解して、「このスマートフォンやATM、電子レンジの内側では何がどういう仕組みで動いているんだろう?」という身近な関心につなげるのは難しいだろうと思います。だから大学での学びとしては、もっと積極的にこの世界のメカニズムに近づいてきてもらえるような仕掛けづくりが必要です。

近藤さん:
私自身は、2020年に発生したコロナ禍により、対面での調査やアンケートなど従来のコミュニケーションが制限されました。当時の未曾有の状況下では既存のアンケートフォームでは現場の複雑な課題を十分に把握しきれない状況にあり、テクノロジーに頼る以外の方法がありませんでした。そんな時、自分でプログラミングして最適なアンケートフォームを作り上げてデータを収集した同僚を見て、「プログラミングって魔法みたいだ」と感動したところから学習を始め、折しも業務でも「データサイエンス・AI教育プログラム」の仕組みづくりに関わることになりました。

2022年にChatGPTが登場して以降、データサイエンス教育は大きく変わりました。以前はニューラルネットワークとしてのAIや、機械学習による分類、データ分析などに軸足が置かれていたのですが、社会的な関心はAI、とりわけ生成AIの方にシフトチェンジしているように思います。

仲田教授:
学びの入口は、例えば、「対話型AIを活用したい」でも何でもいいと思うんです。ですが、駒澤大学でデータサイエンス・AIの基礎を学んだ出口では、意識的にも無意識的にも、しっかりとした思考や視点の基盤がある状態になっていることが大切だと思います。大半の学生はAIというとニューラルネットワークとしてのAIではなく、対話型の生成AIを思い浮かべます。でも、これはとても狭義のAIなんです。その土台になっているデータサイエンスや数理的な考え方を身につけることが、より深く理解し活用する上でも大事です。
実際は、学生に「データサイエンスとは?」と問いかけると、「Excelを使えること?」と返ってきます。「先生、Excelの裏技を教えてください!」って。

近藤さん:
裏技(笑)。

仲田教授:
全部表だよ!って思うんですけど(笑)。原理・原則の知識がないうちは、スキルだけが目について魔法のように見えるんでしょうね。「裏技を身につけてこそ勝てる」みたいに思っている学生はとても多いような気がします。

ただ一方で、「駒澤大学は、流行りの生成AIではなくその土台の数理をゴリゴリやっていきます!」と極端に打ち出したとしても、駒澤大学に興味を持つ10代の学生にはあまり響かないかもしれません。数理が好きな人もそうでない人にとっても、深く学びたくなる風景をどう描くかが重要ですね。

近藤さん:
生成AIは私たちの生活に染み込んでいて、レポートや課題に生成AIを使う学生もいますよね。AIは危険とも言われている中で、使うのを躊躇している学生もいますかね?

仲田教授:
うーん、今は深く考えずに気軽に使っているんじゃないでしょうか。利用すること自体はかまわないのですが、誤りや不自然な文章を丸写しで提出してしまうのは問題ですし、学生にとってもためになりません。生成AIを利用する際の注意点について話しますが、「そんな危険や欠点があるなんて知らなかった」と言う学生も結構います。授業では実際にAIを使って、データが乏しい情報に対してAIを使って分析するとハルシネーション(もっともらしい嘘)を起こしやすいことなどを体験してもらっています。ただ、何度も伝えていますが、「データサイエンス・AI教育プログラム」は、生成AI利用のスキルだけを教える講義ではなく、データを扱うことの意識や考え方、分析手法を身につける学びだということを理解してもらいたいですね。

真贋を見極められるか

仲田教授:
プログラミングとは、コンピュータへ伝えるためのプログラミング言語を学び、それを組み合わせてコンピュータに自動処理を行わせる指示文や計画書を作ることです。単語や文法、構文があるという意味で、英作文のような要素もあります。生成AIは言語学習がとても得意なので、例えば、英検5級程度の学力の人でもAIを使えば英検1級レベルのスマートな英作文を作ることができてしまいます。

近藤さん:
そうなると、「生成AIがあるのに、なぜ私がプログラミング言語を学ばなきゃいけないんですか」と言う学生も出てきますよね?

仲田教授:
そうですね。私は「でも、本物を見極められるようになりたくないですか?」と返しています。大学の教養科目として学ぶプログラミングは入門的なもので、課題もそこまで高度なものではありません。だけど、世の中を動かしているようなプログラムは基本的な要素が複雑に組み合わさったものです。

英検5級の知識や実力しかない人が、生成AIを使って英検1級レベルのプログラミングやアプリを作れたとしても、社会でそれを実装しようとしてなんらかの問題が起こった時に、AIの誤りを見つけたり修正対応やさらなる改善をしたりすることはできないでしょう。その分野の知識がなければないほど、AIが出してきたものを「スゴイものができた!」と盛り上がりがちです。

やっぱり表側をしっかりと学んだ上で、はじめて裏技のようにスキルを活かせるようになると思うんです。「生成AIで効率化!」と言っても、AIがどんな原理で動いているかを理解できないでいると、表面的な使い方しかできません。

近藤さん:
AIで生成した画像で、よく見ると人物の手の重なりや襟の形が不自然な場合があっても、絵を描かない人は全体の印象だけで「すごい!」と盛り上がっちゃいますよね。だからといって、もしそれを公的な広告などにそのまま使用してしまうと、会社のモラルや発表物への質が問われると思うんです。AIで生成された作品のクオリティを判断できないまま、世に出してしまうのは危険ですよね。

仲田教授:
「生成AIは便利だから」と盲目的に使ってしまうのは、例えるならば外食に頼りすぎる状態に近いと思います。データサイエンス・AIの本質は「実体験」で学ぶことだと私は思っています。注文するだけでパッと出てくる料理をたくさん食べることと、自分の手でおいしい料理を作るのはまったく違いますよね。食材の良し悪しを見極めたり、あるいは新しい調理法を考案したりするのは、外食しか経験していない人にはなかなか難しいでしょう。
「AIツールを使いこなす」というスキルも必要ですが、土台を理解しないで扱うと、物事の本質を見誤ってしまう危うさがあります。便利さと併せて特性やリスクも危険性の両方を理解しながらAIを活かしていける学生を増やしていきたいです。
学生にはよく「大学の勉強や課題にAIを使ってくれていいけど、AIは責任を取ってくれないよ」と伝えています。もしトラブルが起きた時に責任を取るのは人間です。自分の力で本質を見極められるようになるには何が大切か、これからも向き合ってほしいですね。

駒澤大学らしい「データサイエンス・AI教育」とは

近藤さん:
「データサイエンス・AI教育プログラム」全体としては、すべての学生の受け皿を作ることを目指しています。1年次の「英語」のように、「データサイエンス・AI入門」を全員が学べるようにして、卒業するまでにデータサイエンス・AIに触れられるようにする、という流れに向けて準備しています。駒澤大学のデータサイエンス・AI教育プログラムは、今後も段階的に進化していきます。科目数が増えるので、先生方は大変になってしまうのですが。

仲田教授:
頑張ります(笑)。

近藤さん:
そして2026年度の「DXフロンティア育成プログラム」では、米シアトルのAmazon本社での実務研修プログラムも予定しています。これはリテラシーレベル修了後、「DXフロンティア育成プログラム」に参加して資格取得までクリアできた学生が対象です。データサイエンスを学びたい意志があれば、学部学科を問わずに参加できます。2026年9月頃に、3泊5日で予定しています。

仲田教授:
僕も行きたいです…(笑)。

近藤さん:
文系学科が多い駒澤大学は、一見、データサイエンス・AI教育のイメージは薄いかもしれません。でも、支援や教育の体制に力を入れているので、「学部学科の勉強も頑張りつつ、データサイエンスも追究したい」という志に応えられる環境づくりを進めています。

仲田教授:
この4年間で土台はできたので、駒澤大学らしい「データサイエンス・AI教育プログラム」はここからが本番だと思っています。今後、他大学もそれぞれに独自性を高めていくでしょう。
個人的に、データを作るところから始められる学生を駒澤大学で育てたいと考えています。大学の課題ではすでにあるデータが与えられて分析することが多いですが、実社会ではそもそもデータが用意されていない課題に向き合うことの方が断然多いです。解決したい問題に対してどのようなデータがどのくらいの量で必要かを考え、測定や入手する方法やコストを考え、実際にデータを作ったり入手したりするところから、本当のデータサイエンスは始まります。

駒澤大学は新しい教育の導入に柔軟で、実践的な教育プログラムも積極的に検討してくれる大学だと思います。2026年度からは「実践データサイエンス」という名称で、いちからデータから作る、あるいは実社会のデータを応用しながら学ぶ科目を新設します。

近藤さん:
仲田先生は「実践データサイエンス」で、どんなことを実現したいのですか?

仲田教授:
価値あるデータをどうやって生み出していくかというところから学べる機会を作りたいです。例えば、駒澤大学では、昼どきの学食が混みすぎるとか、最寄駅からの道が狭くて渋滞するとか、サークル活動の部室が取り合いになるといったことがあります。学生や教職員にとって身近な、だけど実際の社会のなかで見られる問題ともつながった課題があふれています。

学生自身が考え、必要なデータを取り、分析し、問題解決につなげていく。そういった実体験に根ざしたデータサイエンスを展開したいと考えています。
私は料理が好きなんですけど、大学生が本気で真剣に調理実習をするのも面白いんじゃないかなと思うんです。あるいは、農作物を育てる体験もいいですね。限られた農地やコストでいかに収穫高を上げるか、そのためにデータサイエンスが活用されてもいます。まさに、食や農は最も身近なデータサイエンス教育の土壌だと思っています。

近藤さん:
仲田先生のように実体験を重視する授業は学生にとっても新鮮で楽しいと思います。ゼミで実践している先生は多いですが、教養科目でそうやって学ぶ楽しさを知ることが大事だと私も思います。

データを作るところから取り組むのは本当に大変です。だから、ついつい、ありもののデータで対応しようとしがちですが、実際に手や足を動かしてデータを手に入れていく学びはこれからますます重要になってくると思います。
駒澤大学オリジナルの「データサイエンス・AI教育プログラム」で、実体験から学ぶ試みを深めていただけるのはとても心強いです。今後ともよろしくお願いします!

▼仲田教授の研究はラボ駅伝でも詳しく!

  • 取材内容は2026年1月時点のものです。

 

 

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