![]() |
医療健康科学部 学部長/知能画像処理研究室 教授 志村 一男 |
|
医療健康科学部/計測研究室 教授 金子 順一 |
![]() |
![]() |
医療健康科学部 /撮影技術研究室 教授 名古 安伸 |
|
医療健康科学部/治療技術研究室 教授 藤田 幸男 |
![]() |
『診療放射線技師の仕事とは』
名古先生:CTやMRIといった画像診断装置や、放射線治療装置を操作する専門家のことを診療放射線技師と呼びます。医師や歯科医師を除くと、人体に放射線を照射することのできる唯一の職種で、大きく分けると「放射線検査」と「放射線治療」の二つの領域があります。前者に関して言えば、放射線だけではなく、磁力を使うMRIや、場合によっては超音波を利用する検査を担当することもあります。
名古先生:病気か否かを診断するのは医師の仕事ですが、撮影した画像に「この部分に病変らしきものが確認できる」などのコメントをつけることはあります。そのため、診療放射線技師には、装置を操作できるというだけではなく、解剖学などの基礎的な知識が求められます。
藤田先生:放射線は使い方を誤れば人体に害を及ぼします。その上、やっかいなことに目に見えるものではありません。だからこそ国家資格になっているわけですが、検査にしても治療にしても、特殊かつ重要なものを扱っているという自覚と責任を持ち続けることは何よりも重要なことだと思います。 また、技術の進化に伴って医療機器もどんどん高度化していますので、新しい技術にキャッチアップし、臨床で活用していくことも不可欠な要素です。
金子先生:放射線だけでなく薬もそうですが、いちばん大きいのは量の問題です。放射線では「線量」という言葉が使われますが、この「線量」が高くなれば、やはり危険になり得ます。しかし、通常の検査においては、線量は必要最低限に制御されています。この放射線のリスクと、検査を受けずに病変を放置してしまうことのリスクのどちらが高いかというと、圧倒的に後者です。ですので、医師が必要と判断した検査を受ける分には、被ばくのリスクを過度に高く見積もる必要はありません。
藤田先生:がんの治療では検査よりはるかに高い線量を照射します。線量が低いとがん細胞を死滅させることができませんし、高すぎると正常な細胞にまで影響してしまう。だからこそ、適切な線量を見極めることが非常に重要になります。

『「なぜ」を追求し表現する学び』
志村先生:医療健康科学部のルーツは、1954年創立の「東京診療エックス線技師養成所」にさかのぼり、70年以上にわたって数多くの診療放射線技師を育成してきました。そのネットワークを生かして、現在では国立病院や大学病院など30以上の病院で実習ができる環境が整っています。
志村先生:多様な専門性を持つ教員がそろっているのが大きな特徴の一つです。診療放射線技師はもちろんですが、放射線医療の最先端を支える高度専門資格である「医学物理士」の有資格者、物理や化学といった基礎系の学問の研究者、さらには画像診断を行う放射線科医(ラジオロジスト)も専任教員として3名在籍しています。
金子先生:医療機器の性能はどんどん進化しているので、操作方法さえ知っていれば、もしかすると、大きなミスなく使いこなせるかもしれません。しかし、「なぜこのような画像になるのか」という原理がわかっていないと、もっと良くするための工夫ができないと思うんですね。 たとえばCTを操作するときに、原理がわかっていれば電圧や電流、断面の厚みといったパラメータを変えることで線量や画像がどのように変わるのか推測できます。逆に原理がわかっていなければ、「機械がこう言ったのでこうしました」というだけの作業になってしまう。これでは専門家とは言えないし、万一装置に不具合があったときに対応することも難しい。 放射線というのは、医療分野の中では対応関係が比較的はっきりしています。つまり、このようにしたらこうなるということの説明がつきやすい。
学生にどこまで求めるかは難しいところですが、マニュアルに書いてあるからということではなく、「なぜそうなるのか」を説明できるところまで育てたいと考えています。
志村先生:医療健康科学部では1年次から週2回の実験を行い、4年次には全員が卒業研究に取り組みます。学生にしてみるとやることが多くて大変ですが、こうしたカリキュラムを通じて論理的に考え、自分の考えを整理して伝える力を養っています。
『産学連携の成果』
藤田先生:実際に病院で使用されている装置を使って教育や研究ができるようになったことで、学生の理解度や学びへのモチベーションが大きく向上したと感じています。診療放射線技師の資格のための勉強という意味では、どの大学や養成機関でも基本的に同じ内容を学ぶのですが、最新鋭の装置でトレーニングできるというのは、実践力という面では大きな違いになると思います。 目に見える部分で言うと、学部を卒業してから大学院に進学する学生が一気に増えました。この分野だけの話ではありませんが、4年間で学べることはどうしても限界があります。それに加え、現代の技術は急速に進歩しているので、学部では扱えないような深い内容や最新の研究をもっと学びたいと思う学生が増えたのは、教育者として嬉しく思っています。「医学物理士」を目指す学生も増えていますし、治療分野の研究論文が海外の論文誌に掲載されたり、国内外の学会で発表し、受賞するといった成果も生まれています。 もうひとつの成果は、卒業後のリカレント教育が充実したことです。本学あるいは他大学を卒業して臨床で活躍している方々も、このセンターでトレーニングを受けています。先述のとおり、この分野では新しい技術が次々に登場するため、在学時には学べなかった技術や理論を学習する場としても機能していると思います。
志村先生:センター設立前は放射線治療装置がなく、講義も基本的に座学でした。治療分野の研究論文も皆無だったのですが、実機を操作できるようになったことで教育・研究に大きな変化が生まれ、今では「放射線治療といえば駒澤大学」と言っていただけるようになりました。もちろん藤田先生をはじめとする治療領域の先生方
の取り組みや、学生・院生の努力あってのことですが、そもそも機械がなければできないことはたくさんありますので、バリアン社との連携は本当に大きな転換点だったと思います。
『学びたいときに帰ってくる「新しい大学」へ』
志村先生:治療領域での成功モデルがありますので、今度は診断領域へと拡大していくということになるかと思います。繰り返しになりますが、診療放射線技師には「放射線検査」と「放射線治療」の二つの領域がありますので、今回の産学連携によって新しい施設ができることで、その両方を網羅した実践的な教育が実現することを期待しています。 また、今回の施設は、シーメンスヘルスケア株式会社の海外のエンジニアも使用する国際的なトレーニングセンターですので、そこでさまざまな交流が生まれることも楽しみです。
名古先生:大学において最新鋭のCTやMRIを実際に操作できるというのは、学生にとって本当に幸せなことです。就職先の医療機関に学生時代に操作していた装置があるというのは、心理的な安心感という面でも大きいと思います。 また、大学というのは決して在学時だけのものではありません。卒業して社会人になってからでも、学びたいことや研究したいことが出てきたらまたぜひ戻ってきてほしい。今回の施設がそのきっかけの一つになることを願っています。
金子先生:今回の施設は、医療分野以外での活用も想定しています。たとえば、MRIを用いた脳内活動の分析や、CTを用いた対象物の内部構造の可視化など、専門分野の枠を超えた幅広い研究への利用が期待されています。
藤田先生:臨床の現場では実践力がものを言います。それを養うには、知識はもちろん、実際に装置を操作する経験が不可欠です。この恵まれた環境を生かし、何が患者さんにとっての最善なのか、より良い技術を開発するにはどうすればよいかといった発想ができる医療従事者を育てていきたいと思います。
志村先生:これからの大学は変わっていかなければいけません。その大きな柱の一つがリカレント教育だと思います。卒業後にただ懐かしくなって帰ってくるのではなく、最新の研究や技術を学ぶために帰ってくる。そういったことが今後は重要になってくると思います。 藤田先生も言われた通り、治療領域では卒業生や現役の医療従事者がセンターで学び、学会や研究会が本学で開催されることも増えてきました。こうしたことを診断領域でも実現することで、在学生・卒業生・社会人が学びや研究を通してつながってゆく。そんな「新しい大学の形」を目指しています。
写真左から、医療健康科学部 藤田 教授、金子 教授、志村 教授、名古 教授