駒澤大学が”もっと”好きになるWebメディア

学びと研究

「言葉が通じない!」
逆境を乗り越えて勝ち得たプレゼン大会1位

  • 授業
  • ゼミ
  • インタビュー
  • 国際交流
経営学部 市場戦略学科 小野瀬 拡 先生

2025年2月に台湾の台南市で開催された「2025台日SDGs交流-永続台南・都市遊牧」の学生プレゼンテーション大会で、経営学部の小野瀬拡ゼミで学ぶ学生グループが第1位に輝きました。

歴史ある都市が持つ伝統文化をSDGsと結びつけてアピールし、市をブランディングするアイデアを競う大会。協働した台湾人学生とは、言葉によるコミュニケーションができない。現地で明らかになった逆境に直面した3人の学生はどのように対応し、先生はどのようにサポートしたのでしょう。

小野瀬拡ゼミ所属の、宮 彩乃さん(経営学部 経営学科 3年)、須長実生さん(経営学部 市場戦略学科 3年)、海老原真扇さん(経営学部 市場戦略学科 3年)にもインタビューに参加いただき、リアルな体験をお聞きしました!

参加希望者が3人もいたことへの驚き


──台湾でのイベントに参加することになったきっかけを教えてください。

小野瀬教授:
和光大学の當間政義教授からのお誘いです。當間先生には日本マネジメント学会でお世話になっており、私も台湾について研究したことがあったので興味が湧きました。その後学生を連れていこうということになり、日本からは駒澤大学、和光大学、周南公立大学、福山大学の4校が参加しました。

──駒澤大学から参加した3人は、先生のゼミで学んでいる学生ですね。

小野瀬教授:
情報やデータを、視覚的にわかりやすくデザインするインフォグラフィック※を学んでいます。二次元上の表現力は鍛えていますが、プレゼンテーションをする機会は多くありません。ふだんの学びと直結してはいませんが、今回のテーマであるSDGsについて海外の事例に触れることは意義があるだろうと考えゼミで声をかけたところ、「参加したい」と3人が手を挙げました。ゼミで海外の話をしたことはなかったので、3人も名乗り出てきたことに少なからず驚きました。

※インフォグラフィック:インフォメーションとグラフィックの合成語。複雑な内容やイメージしにくい仕組みなどをわかりやすくデザインした表現のこと。

──プレゼンテーションは、渡航前に準備できたのでしょうか。

小野瀬教授:
台南市の基本情報を調べることはできたと思います。現地でのプレゼンテーションは台湾人学生と協働する計画でした。だから、あらかじめ準備できることは限られていました。

──学生のプレゼンテーションに向けて、先生はどのような指導をしたのでしょうか。

小野瀬教授:
何もしませんでした(笑)。
現地で台湾の学生とプレゼンテーションの準備を進める姿勢は、想像していた以上に3人とも積極的でした 。それでも、現地の調査や調査結果の考察、動画撮影やパネル制作、プレゼンテーションのリハーサルなどをこなすには、2泊3日の滞在日程は短すぎました。学生から「時間が足りない!」「台湾の学生と言葉で通じ合えない…」といった不安が出たときだけ、アドバイスをしました。アドバイスと言っても、ただ「大丈夫」と伝えただけです。

インフォグラフィックの制作では、集めた情報やデータを取捨選択して、限られたスペース内にアウトプットします。そのため「次元を変えて考える」ように指導しています。今回のプレゼンテーションの準備でも、普段の授業で伝えているインフォグラフィックの表現を活かせているようだったので、気休めの声がけではなく、本当に大丈夫だと思ったのです。

言葉が通じない&時間がない二重苦の克服

宮さん:
小野瀬ゼミは、実体験から多くのことを学びます。インフォグラフィックも経験者はおらず、先輩の作品を参考にしたり、仲間の制作に刺激を受けたりしながら作り上げています。
私は台湾で主に動画の撮影と編集を担当しました。現地の学生から台南市の魅力を伝えるのに効果的なスポットを身振り手振りで教えてもらい、撮影してまわりました。「そこに行ってみたい」と思わせる興味とインパクトを短い映像で伝えるため、バズっていたTikTokなどを参考に3分と30秒の2本の動画を仕上げました。普段スマートフォンで撮っている自分の記念や記録のためではなく、多くの人に見てもらう動画を仕上げられたことに達成感がありました。

須長さん:
当初は英語のプログラムと聞いていましたが、 後日、英語で会話できないことがわかり、中国語と日本語の壁に悩まされました。自動翻訳機も細かなニュアンスが伝わらず、かえって険悪なムードになったことも。それでも、お互いを理解しようとすることを諦めない姿勢が大切であると実感できた貴重な体験になりました。
プレゼンテーション用のスライドが完成したのは、発表の当日でした。他のグループが学術論文を引用して提案の根拠を示してきたなかで、私たちはマーケティングの観点、誰に何を伝えたいかを自分たちの経験を元に訴えました。ゼミや学会の発表において、凝ったデザインや動きのあるスライドは余計な装飾として“ノイズ”扱いされます。しかし、そのスライドが評価されたことが、とてもうれしかったです。宮さん中心に制作した動画も合わせて評価され、努力が報われる結果となりました。

海老原さん:
私は人前で話すことに苦手意識がありました。これを克服するには、経験を積むしかありません。それが、台湾でのプレゼンテーションに参加した理由の一つです。
動画の撮影に多くの時間を使い、プレゼンテーション用のスライド制作や動画編集、そして台本の作成を始めたのは、本番前日の夕食後から。 聴衆の関心を引くため、何を、どのような順で、どんな言葉を使えばいいかを考え抜きました。それでも確信が持てなかった私に、小野瀬先生が「完璧を求めなくていい。最善を目指せ」と言葉をかけてくださり、気持ちが楽になったことを思い出します。宮さんが撮った動画、須長さんが仕上げたスライドもすごく良くできていて、それらを見たときに良い成績を残せるかもと思いました。みんなで協力して成果を上げられたことに、とても満足しています。

ずば抜けていたビジュアル表現に好成績を確信

──プレゼンテーション大会で1位を獲得した結果を、どのように捉えていますか。

小野瀬教授:
身内びいきかもしれませんが、ビジュアル表現は彼女たちがずば抜けていたと思います。

それが、ゼミでインフォグラフィックを制作してきたためだとすれば、嬉しい成果です。学生たちがふだん学んでいることを確実に意識し、海外で実行できていることが見て取れたとき、台湾での成功を確信しました。

──台湾から帰国して、学生3人に変化は見られましたか

小野瀬教授:
経験は人を成長させることを、改めて実感しています。3人とも、ゼミでも発言や行動にたくましさが感じられるようになりました。

──みなさんは、自身の変化や成長を感じていますか。

宮さん:
自分を俯瞰する視点を持てるようになりました。「視野が狭まりがち」とも聞く就職活動が始まる前に、自分を見つめ直す有意義な体験になりました。就活を終えたら語学力を鍛え直し、卒業までにまた海外プロジェクトに参加したいです。

須長さん:
SNSやメディアではわからない現地の空気感や人の心に触れ、自分の目で見て体験することの大切さを理解しました。また、何ごとに対しても前向きになり、「台湾で頑張れたのだからもっと頑張れる」と自分の背中を自分で押せるようになりました。

海老原さん:
ほとんどが台湾人かつ初対面の人の前でプレゼンテーションをやり切れたことで、話すことへの苦手意識がかなり薄れました。「苦手と思っていることでも、行動を起こすことで克服できるはず」という自信を持てるようになりました。

  • 取材内容は2025年7月時点のものです。
いいね
1
爆笑
0
役立つ
0
びっくり
0
  • LINEで送る
  • Xでシェア
  • Instagramでシェア
リンクをコピーしました!