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患者さんの「ジャーニー」を支え続ける ――シーメンス・ヘルシニアーズの技術と人材

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シーメンスヘルスケア株式会社
カスタマーサービス事業本部
サービスオペレーション本部
本部長 
渡辺 浩子 氏

シーメンスヘルスケア株式会社
ダイアグノスティックイメージング事業本部
執行役員事業本部長 
宇根田 宏徳 氏

 

CTやMRIといった高度な画像診断に携わる人材の育成を目的とした「駒澤大学-Siemens Healthineers画像診断人材教育センター」。この施設を共同で設立するシーメンスヘルスケア株式会社ダイアグノスティックイメージング事業本部 執行役員事業本部長・宇根田宏徳さんと、カスタマーサービス事業本部サービスオペレーション本部本部長・渡辺浩子さんに、世界的な医療機器メーカーであり、シーメンスヘルスケア株式会社のグローバル本社であるSiemens Healthineers(シーメンス・ヘルシニアーズ)の理念や企業文化、医療の持続性に対する取り組みについてお聞きしました。

 

左から、宇根田 宏徳 氏、渡辺 浩子 氏

『予防、スクリーニング、診断、治療』

――シーメンス・ヘルシニアーズは世界的な医療機器メーカーですが、御社の強みはどのような点にあるとお考えですか。

宇根田さん:ひとことで言えば、患者さんの「ジャーニー」に一貫して寄り添うことができる点だと思います。 ヘルスケアには予防、スクリーニング(健康診断や人間ドックなど)、診断、治療というプロセスがあります。こうした患者さんの一連の医療体験を「ペイシェント・ジャーニー」と呼びますが、弊社はその各プロセスに対応する幅広い製品ポートフォリオを持っています。 具体的には、体外診断薬・機器に始まり、画像診断から血管内治療支援、放射線治療を行う装置・ソリューションなどです。ドイツ本社をはじめとする世界各地で開発されたこれらの装置・ソリューションを医療機関にご提供することで、より質の高い医療の実現や、医療現場の課題解決に貢献していくことが私たちのミッションだと考えています。

 

――「ペイシェント・ジャーニー」という概念について、もう少し詳しく教えていただけますか。

宇根田さん:がんや心疾患、脳血管疾患といった病気は、感染症などとは異なり、一度の治療で完結することはほとんどありません。患者さんは診断から治療、その後の経過観察、場合によっては再治療を含め、長期にわたって医療と関わり続けることになります。そのような医療の流れを支える基盤として、医療機器は重要な「プラットフォーム」の役割を担っています。だからこそ私たちは、特定の製品を提供するだけではなく、ヘルスケアの各プロセスにおいて価値を創出し、患者さんと医療従事者の双方に貢献することを目指しています。

 

『イノベーションを生み出す企業文化』

――シーメンス・ヘルシニアーズは、レントゲン博士がX線を発見した翌年(1896年)には医療用X線管を製品化したそうですね。通常、基礎研究から応用までは長い年月を要します。当時としては、極めて迅速な製品化だったと言えそうですね。

宇根田さん:弊社の社名・ブランド名にある「Healthineers(ヘルシニアーズ)」という単語は、「Healthcare(ヘルスケア)」と「Engineering(エンジニアリング)」と「Pioneering(パイオニアリング)」を組み合わせたもので、優れた専門技術と開拓者精神で医療の発展に貢献するという理念が込められています。それを実現するために、弊社では、毎年売上高の8~9パーセントを研究開発費に充てています。そして、世界各国の先進的な医療機関とのパートナーシップを通じて得られる知見と最先端技術を組み合わせながら、医療におけるイノベーションを継続的に創出しています。

 

――具体的な成果としてはどのようなものがありますか。

宇根田さん:最近の大きなイノベーションとして「フォトンカウンティングCT」を挙げることができます。 CTは、人体にX線を照射し、組織ごとのX線吸収量の違いを検出器で測定し、そのデータをもとにコンピューターで断層画像を再構成する装置です。 従来のCTは、人体を通過したX線をシンチレーター(蛍光体)によって一度光に変換し、それを電気信号として検出していました。ただ、この光への変換過程では、ノイズの発生が避けられず、さらに、従来の検出器は、個々のX線光子(フォトン)が持つエネルギーを直接取得することができませんでした。 これに対してフォトンカウンティングCTは、X線光子を半導体検出器によって一つひとつ直接検出し、電気信号に変換します。光に変換するプロセスが不要なためノイズを低減できるだけでなく、光子一つひとつのエネルギー情報を取得・解析することで定量的な評価も可能となります。その結果、従来のCTよりも高い空間分解能と組織識別能を実現し、診断精度の向上や新たな臨床価値の創出が期待されています。

 

――CTのしくみ自体を変えるようなイノベーションなのですね。

宇根田さん:開発の起点となったのは、沖縄県にあるアクロラド社が開発した半導体素子技術です。この技術に目をつけた弊社のエンジニアによって2003年に基礎技術の開発がスタートし、18年後の2021年にようやく製品化されました。

 

――18年に及ぶ開発期間には驚きます。その原動力は何だったのでしょうか。

宇根田さん:開発を支えた大きな原動力は、CTの分解能の壁を突破したいという強い思いでした。 当時、画像診断の分野では、冠動脈のような微細な構造を評価するうえで、CTの空間分解能には限界があると考えられていました。そこで、より高精細な画像を取得し、診断からカテーテル治療やバイパス治療といった治療方針の決定までを支援できる新たなプラットフォームを生み出そうという挑戦が始まりました。その中で生まれたのが、検出器の基本原理を根本から見直したフォトンカウンティングCTです。

 

『現場を止めない』

――御社はカスタマーサービスにも非常に力を入れているそうですね。

渡辺さん:我々が提供するソリューションは、一度導入していただくと長期にわたって使っていただくことが一般的です。その長期間にわたる現場での運用を支えることがカスタマーサービスの役割であり、弊社には、営業社員よりも多くのサービスエンジニアが在籍しています。 機械である以上、長期間のご使用において、故障や不具合のリスクを完全になくすことはできません。そんな中で私たちがもっとも重視しているのは、「現場を止めない」ということです。医療現場のシステムが止まると、必要な検査や治療が受けられない患者さんが出てきてしまいます。そういったことが起こらないように、システムダウンタイムを最小限にすることが大変重要になってきます。そのために、不具合を事前に感知し、予想されるシステムダウンが起こる前に修理をすることもあります。また、専門のエンジニアが電話やオンラインで症状をお聞きしながら解決する方法をお伝えし、まずはその場で復旧することを目指します。お客様からご連絡いただく不具合の6割以上が、こうしたリモートでの対応で解消しています。 パーツの交換などでエンジニアが現場に向かう必要がある場合にも、なるべく一回で修理を終えるようにします。装置が止まっている時間が長引けば、その間、患者さんが検査や治療を受けられなくなってしまいます。だからこそ、高度な技術力と迅速な対応力を備えたエンジニアを育成することが、カスタマーサービスの品質を維持する重要な基盤となっています。

 

『装置の性能を引き出すトレーニング』

――そのために、エンジニアのトレーニングが必要になるわけですね。

渡辺さん:おっしゃる通りです。シーメンス・ヘルシニアーズでは、CTやMRIの装置ごとにテクニカルトレーニングを受けて認定を取得した上で、お客様のもとに向かいます。本社や生産拠点のあるドイツや、アメリカ、中国などで、1週間から2週間、複数の装置を扱う場合は数カ月にわたるトレーニングを受け、認定を取得する必要があります。

 

――機器ごとに認定を取る必要があるんですね。御社の装置を導入した医療機関に対して、どのような教育・トレーニングを提供されているのでしょうか。

渡辺さん:はい、装置導入時の操作トレーニングから臨床活用支援、オンライン教育、継続的なスキルアッププログラムまで幅広い教育サービスをご提供しています。医療機器の高度化が進むなか、装置本来の性能を十分に活用していただくためには、適切な運用知識と技術の習得が欠かせません。現場で活躍される診療放射線技師の皆さまが、装置を安全かつ効果的に活用できるよう継続的に支援することも、私たちの重要な役割です。

 

『持続性への貢献』

――売って終わりではなく、むしろそこからがスタートだと。医療の持続性という面において、装置そのものではどのような取り組みをされていますか。

宇根田さん:持続性への貢献という観点では、装置の耐久性向上に加え、資源利用の最適化や運用効率の改善も重要なテーマです。例えば、従来のMRIでは冷却剤として数百リットルの液体ヘリウムが必要です。しかし、地震などによって装置に大きな影響がおよび、「クエンチ」と呼ばれる現象が発生すると、液体ヘリウムが気化してしまい、再充填が必要になります。 一方で、液体ヘリウムは近年価格が上昇しているだけでなく、世界的に安定供給への懸念も高まっています。つまり、医療機関にとっては経済的負担に加え、安定的な供給を確保できるかという点も重要な課題となっています。こうした課題を踏まえ、弊社では液体ヘリウムの使用量をわずか0.7リットルまで削減したMRIを開発しました。これにより、資源消費の低減だけでなく、供給リスクの軽減やメンテナンス負担の低減にも貢献しています。 また、ランニングコストの削減も、装置によって実現できる重要な価値の一つです。たとえば稼働時や待機中の消費電力を抑えることで、医療機関の電力コスト削減につながります。医療機関を取り巻く経営環境が厳しさを増すなか、私たちは診断・治療の質の向上だけでなく、医療機関の持続可能な運営を支えることも重要な使命だと考えています。

 

 

 

『「ジャーニー」を体感する学びへ』

――では最後に、今回設立される「駒澤大学-Siemens Healthineers画像診断人材教育センター」について、その特徴や期待することを教えてください。

渡辺さん:最大の特徴は駒澤大学の先生方や学生さんと、われわれ企業のエンジニア、そして医療従事者の方々が一つの施設を共同で利用しながら学び合える環境が実現する点にあると考えています。 先ほどお伝えした通り、これまで弊社のエンジニアが社内認定を取得するには、海外でトレーニングを受ける必要がありました。それが国内で可能になる意義はとても大きく、医療従事者の方々にとってもトレーニングで実機に触れられるというのは大きなメリットだと思います。 そして、もちろん駒澤大学のみなさまには、医療の第一線で使われている最新の装置で学習・研究に取り組める環境が整います。こうした取り組みはシーメンス・ヘルシニアーズ全体で見ても非常にユニークで、国内だけでなく、海外からもその成果が期待されています。

宇根田さん:百聞は一見に如かずと言いますが、やはり実機を自分の目で見て、実際に操作してみないとわからないことはたくさんあると思います。今回設置させていただく超電導磁石式全身用MR装置「MAGNETOM Flow.Elite」は国内ではこれから本格的に導入が進んでいく最新機種ですし、X線CT組合せ型SPECT装置「Symbia Pro.specta」を使ったトレーニングができるのはアジアでもここだけです。渡辺も申した通り、大学、企業、医療現場が連携しながら学べる環境は極めて貴重です。本センターを通じて、これからの医療を支えるさまざまな人材の育成に貢献できることを、本当に光栄に思っています。

 

――駒澤大学には既にバリアン メディカル システムズ社との共同施設「放射線治療人材教育センター」があるので、そこと連携できるというのも大きいですよね。

渡辺さん:おっしゃる通りです。今回設置するCTとバリアンのシステムをネットワークで連携させることにより、診断から治療までの一連のワークフローを学ぶことが可能になります。こうした環境が実現すれば、画像診断から放射線治療までを統合的に学べる教育・トレーニング拠点としてアジアで初の試みとなります。

 

――駒澤大学の敷地内で診断から治療まで、患者さんの「ジャーニー」に寄り添う医療を体感できるようになるわけですね。本日はありがとうございました。

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