
外務省 小林 悠馬
外国に関心を持つようになったきっかけは、中学時代の塾の先生でした。インターネットが普及していなかった当時、先生の海外経験の話は大変貴重で、夢中になって聞いたのを覚えています。
実際に異文化を自分の目で確かめたくなり、大学時代はアルバイトで旅費を貯め、長期休みにさまざまな地域を旅しました。アメリカでは、グランドキャニオンのような壮大な自然に圧倒される一方、スラム街を歩き、貧富の格差を目の当たりにしました。カンボジアではアンコールワットの壮大な建築に人類の偉大さを感じると同時に、地雷被害が残る内戦の傷跡に歴史の光と影を見ました。
海外を旅していると、日本の文化や食事について尋ねられるのは日常茶飯事です。しかし「なぜ日本では宗教が根付いていないのか」と問われた際、何も答えられず、自国について何も知らない自分に気づかされました。それを機に歴史などを学び直すうちに、日本が先人たちの知恵と努力によって築かれたことを知り、深い感銘を受けました。以来、旅で見た国際問題の解決や日本の発展に貢献したいと強く願うようになりました。

大学では、さまざまな国際関係の講義を通して、自分の興味関心を再確認できました。特に印象に残っているのは、国際政治の授業で扱った拉致問題です。高世仁氏の『拉致 北朝鮮の国家犯罪』と、元北朝鮮工作員キム・ヒョンヒ氏の『いま、女として-金賢姫全告白』を読み、物事を両局面から考える大切さや、異なる立場を理解することで問題の本質に迫れることに気づきました。この視点は今の仕事にも生かされています。
大学卒業後は証券会社へ就職しました。
大学時代に外務省で働きたいという気持ちはありましたが、外務省には優秀な人が多く、自分には無理だと決めつけていたのです。しかし民間企業で2年間働くうちに挑戦したい気持ちが強まり、退職して外務省試験を受けることを決意しました。
現在は、EU及び英国との経済連携協定(条約)の実施を担当しています。貿易上のルール、例えば物品の関税率や、原産地(例:日本産品)の定義、貿易上の問題が発生した際の解決手続等について定めたうえで、そのルールが守られているか、改善すべき点はないかなど、締結国間で確認し、議論しています。
自分の「好き」や「関心」を大切にし、それに向かって一歩踏み出せば世界はどんどん広がります。私は旅を通して外務省という目標が見つかりました。しかし目標に向かって進むうえで、不安はつきものです。外務省を志したときも、本当に就職できるのか日々不安を感じながら過ごしていました。今でも仕事をするなかで任務を全うできるのか不安になることがあります。不安や悩みは誰にでもありますが、目標が見つかった際は周囲の意見に惑わされず、一歩ずつ歩みを止めなければ、得られるものが必ずあるはずです。大学で学べる機会を最大限に生かして、自分の感性を大切にし、積極的にチャレンジしてみてください。